小児科医コラム
経口補水療法
嘔吐や下痢は、日常診療で多く見る症状で、一般的にはウイルス性の急性胃腸炎が原因です。嘔吐のために水分やミネラルが取れないのに、下痢でどんどん水分・ミネラルなどが出ていくと脱水症を引き起こします。お母さんたちの中には、お子さんの嘔吐が続いて水分が取れないのに、下痢も始まって慌てて病院を受診して、点滴してくださいとお願いする という経験をされた方がいらっしゃると思います。今でも重症の脱水症の場合には点滴治療を行いますが、最近の急性胃腸炎の治療では、脱水を未然に防ぐことと、脱水症の症状を軽減させる目的で経口補水療法が推奨されています。
経口補水療法は、もともとはWHO(世界保健機関)が、点滴治療が困難な発展途上国でのコレラ等の下痢症に対する治療法として開発したものです。水分 ミネラル 糖分を適正に配合した経口補水液を使うもので、今では先進国でも急性胃腸炎時の治療法としてガイドラインで推奨されています。
具体的には、
用いるものは市販の経口補水液で問題ありません。いわゆるスポーツドリンクは含まれているミネラル分が少なく大量に使用することはできません。とりあえず家にある ということで使用するのはよいですが、続けて治療する場合は、少し大変ですが、買ってきてください。嘔吐・下痢の症状が始まったら速やかに自宅で開始することが望ましいのです。嘔吐がある場合でも少量ずつ飲ませるこの療法は推奨されています。5ml(ティースプーン1杯、ペットボトルのキャップ3/4程度の量が目安です)を5分ごとに与えます。根気よく続けることが大切です、子どもは少し飲めるとすぐに欲しがってダダをこねたりしますが、子どもの言いなりになってはいけません。また、ほかの家族がその子の前で食事をしないというような配慮も必要です。
おおまかな投与量は 体重1kgあたり50ccです。これを4時間かけて与えるのが推奨されている治療法ですが、とりあえず1時間頑張ってみてください。これで嘔吐が収まったようであれば、1回の量を増やしても大丈夫です。それでもおさまらなかったり、高熱、頻回の下痢、血便、手足が冷たい 等の症状が出てきた場合は、やはり小児科を受診してください。万能の治療法ではありませんし、嘔吐・下痢を症状とする他の重篤な病気が隠れている可能性もあります。
(参考:小児急性胃腸炎診療ガイドライン 日本小児救急医学会編)
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